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汎用図書館としてのデジタル図書館

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■汎用図書館と文庫と学習

あらゆる主題が網羅され、相互に内容的な関係をもちつつ、同じ内容のものはない。それら膨大に蓄積された書き言葉(テキスト)やドキュメントの集合体。これが、古来より人類に構想されてきた「汎用図書館」のイメージ。そして資源の蓄積と再利用が、「図書館」という手法、活動のエッセンスです。他方「文庫」はもともと、ある特定の個人がその興味と関心にしたがって収集した「自分用図書館」、「個人蔵書」の語義が原型です。たとえば三木清の次の一文です。

「本は自分に使えるように、最もよく使えるように集めなければならない。そうすることによって文庫は性格的なものになる。」(「読書子に寄す」とiCardbook https://society-zero.com/chienotane/archives/5171
・三木清

(思想家紹介 三木清 « 京都大学大学院文学研究科・文学部 https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/japanese_philosophy/jp-miki_guidance/

ここで汎用図書館と自分用図書館の間に「学習」があるわけです。学習は再利用の一形態です。

ただたくさんの個人が多様な興味と関心のもとに学習実践を行い、自分用図書館を形成する用途に耐える、汎用図書館には、相当な規模が要求されることになります。しかも学習者に小中学校の生徒、つまり義務教育課程の学習者を想定するならば、「公」の条件を充足すべく、汎用図書館は
1.全国津々浦々、どこにいても
2.同程度の規模とサービス内容が担保される
のが望ましいといえます。

他方学校教育の現場にある「学校図書館」は、上記の汎用図書館を全国の生徒に提供したものになっていません。予算の制約があるからです。文科省も現実的な「解」として生徒数によって揃えるべき蔵書数を決めています。情報格差が必要悪として厳然と存在しています。

リアルの本を前提にする限り、この妥協策には合理性があると言わざるを得ません。しかしながら、21世紀のいま、わたしたちにはデジタルというもうひとつの解決手段に道が拓かれています。デジタルであるなら、上記の汎用図書館を全国の生徒たちに平等にアクセス可能な仕組みとして準備することができそうです。

日本電子出版協会(JEPA)がさきごろ提案したのはまさにこの「汎用図書館」の発想です。

 

■「学校デジタル図書館」

義務教育課程の子供たちの中に情報格差を広げないためには、日本にひとつ、文科省主催の「学校デジタル図書館」があれば良い。これならリアルの学校図書館にあったような予算の制約から多少自由になれそうです(もっともコンテンツを提供してくれる版元との利用料金体系設定には工夫の余地がある)

たしかにすでに、子供たちを対象にした「電子図書館」はB2C(個人向け)、B2B(機関向け)ともに、各種サービスがすでにあります。

例:
B2C
・ベネッセ:電子図書館まなびライブラリーは進研ゼミ会員向け 約1,000冊の電子書籍を読める
・ECC:ECCジュニア電子図書館はECCジュニア在籍生向け

B2B
School e-Libraryは、小中高等学校向け向け、クラスの41人が同時に出版社8社1000冊の電子書籍を読める
(以上2021年6月時点)
・ポプラ社:Yomokka!(よもっか!)は自治体または学校単位での契約 小中学生が約800冊のポプラ社作品が読める(※2022年度より他社作品も追加)。
(2021年9月時点)
ジャパンナレッジSchool

これらはこれらで活用されていけば良いのですが、

・全国の生徒たちに平等にアクセス可能
・(生徒向け)汎用図書館としての規模感

のふたつを満たしてくれるのは、

日本にひとつ、文科省主催の「学校デジタル図書館」

でなければならない、といえそうです。(詳しい提言内容は後述のクリップから、どうぞ)
・つくろう!みんなのデジタル学校図書館

以下、学校図書館のデジタル化をはじめ、およそ学習者のための電子図書館の動向や教科書のデジタル化にかかわる、クリップを集めました。ご活用ください。

 

____________

クリップ集

●学校デジタル図書館特設サイト|日本電子出版協会(JEPA) https://www.jepa.or.jp/digitallibrary/
情報格差解消のための提言
文部科学省の学校図書館図書標準は、生徒数によって揃えるべき蔵書数を決めている。都会の大きな学校では蔵書1万2000冊、地方の小さい学校は2400冊と、読める本の数に格差がある。加えて図書室を使えない夜間中学の子ども、海外の日本人の子ども、日本に住む母国(語)が日本(語)ではない子ども、紙の本は読めない子ども、読みたい本の買えない地方の子どもや収入の少ない家庭の子どもを含めると、情報格差は拡がる。そこで日本にひとつ、文科省主催の「学校デジタル図書館」

★Joint statement on access to e-book and e-textbook content | Jisc https://www.jisc.ac.uk/news/joint-statement-on-access-to-e-book-and-e-textbook-content-06-oct-2021
英国情報システム合同委員会は、「高等教育・継続教育に関わる学生・教員が、電子書籍とデジタル教科書に公平で持続可能なアクセスを確保できるよう支援する」との声明を発表。電子図書館の価格体系やアクセス条件により、コロナ禍のオンライン学習などが支障をきたしている、との認識が出発点。

 

●月に1冊も本を読まない中学生12.8% 対策は「電子図書館」
https://www.asahi.com/articles/ASP9F6SNDP97PPZB006.html
岡山県内の中学生を対象に県教育委員会が行った初めての読書調査。
月に1冊も読まない「不読率」(漫画、新聞、雑誌を除く)は12・8%。毎年全国規模で実際されている「学校読書調査」とほぼ同じ。この数値を、さらに改善するのに電子図書館が有益、と。
・全国版 書籍の不読書率(小・中・高校生)

青線:小学生/オレンジ線:中学生/黒線:高校生
https://news.yahoo.co.jp/byline/iidaichishi/20191108-00149899

 

●コロナ禍で変わる学校図書館のあり方 電子図書館の利用が増える一方、冊数不十分による地域格差も https://news.yahoo.co.jp/articles/2870ac5fce34c30348a6bee1f904a6247fd79681
文部科学省の学校図書館図書標準を達成している学校の割合は、全国平均で小学校が71.2%、中学校が61.1%。都道府県別に見ると40%前後にとどまっている自治体もあり、地域格差が甚だしい。

他方電子図書館を利用している学校の割合は小学校で0.2%、中学校で0.3%と、ごくわずか。

 

●「学校図書館」デジタル化阻む紙信仰と3つの壁 https://toyokeizai.net/articles/-/427567
「『OECD生徒の学習到達度調査(PISA)』で日本人の読解力が落ちたのは、CBT(Computer Based Testing)に慣れていなかったから。今の若い世代はチャット文化なので、ディスプレーで長文を読むことに不慣れなのです。その訓練をするためにも、電子書籍は役立つでしょう」。

[追記]
●ベネッセ教育総合研究所 「読書アンケート2020」
https://berd.benesse.jp/up_images/textarea/bigdata/20210315_dokuyso_q.pdf
調査対象:「まなびライブラリー」の小学6年生の利用者
小学生は本屋へ行って自分で本を買うことはできても、Webサイトから電子書籍を購入はできない(クレジット決済が必要だから)。しかし(調査対象に偏りがあるとはいえ)、与えられた情報環境の中でリアルの紙版の書籍より、電子書籍での「読書」に親近感を持ち、習慣化ができている、といえそうだ。
・「一ヶ月に何冊くらい、読みますか」の回答の分布(学校の授業は対象外。また「本」にマンガ・雑誌は含まない)

「一ヶ月に何冊くらい、読みますか」

 

●【学校図書館の電子書籍化とは】導入システム3社を比較! https://donguri5.com/library-electronization-system/
「コロナ禍を受け、日本でもデジタル教科書を義務教育課程で取り入れるなど、電子書籍へのニーズと関心が高まっています。だから今こそ、学校図書館の電子書籍化の導入を検討する絶好のチャンスなのです!」

・学校図書館の電子書籍システム化メリット

時間的に「いつでも」借りられる
物理的に「どこにいても」借りられる
貸し出し返却が容易で確実
書籍の破損・損失がない
検索が容易である

・学校図書館の電子書籍システム化ハードル

機器の故障やトラブルに対処できるか
ITCや電子書籍についての教師・生徒共に知識とスキル不足
授業で活用する方法の教師のスキル不足
すぐに司書によるレファレンスが出来ない
資金についての問題

 

●児童書も電子書籍で 小中学生向けに読み放題サービス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD105090Q1A810C2000000/
紙の本の需要が根強い児童書や絵本の分野で、電子書籍化の取り組みが出てきている。ポプラ社が、小中学校向けに電子書籍の読み放題サービスを立ち上げた。同社の新サービス「Yomokka!(よもっか!)」は学校や自治体と契約。子どもたちはタブレット端末などを使い、ポプラ社のウェブサイト内で児童書や絵本の電子書籍を読める。7月に小学校を対象に無料体験版を始め、現在109校が試験導入している。

 

●yomokka!  電子書籍読み放題サブスク
https://prtimes.jp/main/html/rd/amp/p/000000356.000031579.html
『Yomokka!』の理念に共感し作品提供を予定している出版社10社、あかね書房/あすなろ書房/岩波書店/偕成社/学研プラス/国土社/スターツ出版/静山社/文研出版/理論社(五十音順/2021年9月30日時点)

 

●デジタル参考書200冊以上を月額980円で読み放題に 学習管理のスタディプラスが新サービス
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/15/news123.html
参考書のサブスク:旺文社や東京書籍、山川出版社など出版社18社(21年9月時点)の参考書200冊以上が読める。
・電子版も無料で

 

●辞書アプリDONGRI® 『旺文社国語辞典』を本日発売 『ロイヤル英文法』と理科4タイトルも年度内発売へ https://www.east-education.jp/news/news_release/11103/
GIGAスクールの3OS(iOS、Windows、Android)にネーティブ(オフライン)とWeb(オンライン)双方で対応した辞書サービスDONGRI(ドングリ)。
大手出版社の小中高向け32コンテンツが使える。

 

●デジタル教材「リブリー」と教育図書が提携、22年4月より新科目「公共」のデジタル教科書・問題集を提供 https://edtech-media.com/archives/48771
検定教科書の編集・発行を手がける教育図書と15社・400冊以上の教科書や教材のデジタル化を手がけるLibry(リブリー)が業務提携。
・高校「公共」の学習者用デジタル教科書、デジタル版・公共ワークノート(問題集)

 

●総合学習のための補助教材 『高等学校の「情報Ⅱ」のためのデータサイエンス・データ解析入門』
https://www.stat.go.jp/teacher/comp-learn-04.html
株式会社Rejouiが制作した高等学校での選択科目「情報Ⅱ」の補助教材。総務省統計局サイト上で公開されていて、総務省統計研究研究所が監修。「先生へ向けたもので、指導を行う際、その導入あるいは発展をサポートするための活用素材として作成」されてるので、前提知識がなくても読んでいける内容。」

 

●「電子教科書が使いにくい」「導入に時間がかかる」 NTT東西らが教育DXの新会社、解決したい3つの課題 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2110/05/news155.html
3つの課題を解決するため、NTT東西と大日印、大学の教科書電子化で8日に新会社。
1.電子教科書とWeb会議システムを併用しようとすると使いにくい
2.できる限り1つのプラットフォームとしてほしい
3.教科書電子化の許諾を取れない
新会社は大学向けに教科書の電子化や配信サービスを提供するほか、電子教科書の取次・流通支援なども手掛ける。

 

●SNSシェアのシミュレーションを通じてメディアリテラシーの向上を促進  https://about.smartnews.com/ja/2021/09/22/20210922/
スマートニュースが大学生・高校生向けのオンラインゲーム教材を無償で提供 。
「生徒は、現実のSNSを模した仮想のタイムラインを見ながら、投稿をシェアするか否かを決めてフォロワーを増やすことを目指すとしている。
タイムラインに流れる投稿(虚偽情報を含む)を、実際にシェアし、フォロワー数の変動を体感することで、日頃の情報の受け取り方、発信の仕方について振り返ることができる。
また、SNSの根幹にあるアルゴリズムについても考えるきっかけを与えることができる。」

 

●COVID-19の影響による専門図書館の動向調査(2021/10/01)について - saveMLAK https://savemlak.jp/wiki/saveMLAK:%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9/20211001-dlib
日本の専門図書館864館を対象に調査。
159館の図書館が休館、558館が開館、13館が廃止、134館は不明。
「前回の調査と比較して、休館している図書館が増加しました。オンラインコンテンツを公開する機関も引き続き増えています。デジタルシフトを進める図書館の活動が見えてきました。 一方で、ウェブサイトに開館状況が明記されていないなど、状況が確認できない図書館が引き続く多くありました。」

 

●スマホで読める電子図書館 コロナ禍で貸し出し急増 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2109/27/news057.html
公共図書館における電子図書館導入 推移

「図書館が貸し出し用に用意する場合、1冊当たりのコストは紙の本の約2~3倍高額になる。しかも「紙の本と違い、買って終わりではないので、その都度コストもかかる」
そのため、予算が潤沢な自治体でなければ電子書籍の冊数を増やしにくいといった課題もある。千代田区立図書館では、期間を2年間としたり、貸し出し回数を52回としたりして電子書籍のライセンスを購入するなどの工夫をしている。

 

●新型コロナ: 世界大学ランキング、中国勢躍進 東大は35位: 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB020WT0S1A900C2000000/
日本勢で上位200位に入ったのは東大、京大のみ。東北大が上位300位以内、大阪大と東京工業大、名古屋大が上位400位以内に入った。


(東大、過去最高35位…THE世界大学ランキング2022 https://reseed.resemom.jp/article/2021/09/02/2204.html

 

 

 

  

 

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